再配達がドライバーを苦しめる」は誤解? 運送業界の課題の本質とは

運送業界が直面している課題は、ドライバー不足、長時間労働など、運送業界が抱える課題を広く世に知られるところとなった
課題の本質が伝わらず、局所的な課題が運送業界全体の課題であると誤解されている
宅配における再配達問題もその1つで、運送業界における課題の本質を考えてみる

宅配便取扱個数は、
2008年度は約32億1000万個
2017年度は約42億5000万個
10年で3割以上増加した
アマゾンや楽天、ZOZOTOWNに代表される通販ビジネスの台頭によって、宅配便の取り扱いは年々増加している(年間1.8億時間、約9万人相当の労働力が消える再配達)
多くの人が再配達は、ドライバーさんに悪い、時間指定をして、ドライバーさんに手間をかけさせないようにと考えるようになり、宅配便ドライバーの苦労が世間に広く伝わった
再配達に対する批判的な世論の影響もあってか、
再配達率は
2015年には23.5%
2017年10月には約15%にまで低下

実は個人向け宅配便は、国内を流通する貨物の約5.8%にすぎない
日本国内には、約6万2000社の運送会社がある
実は宅配便を看板として掲げているのは21事業者
ヤマト運輸のシェアが約44%
佐川急便が約30%
日本郵便が約21%であり
上位3社で約95%を占めている
国内を流通する全貨物のうち、個人向け宅配便比率は、重量ベースで0.05%、件数ベースで5.79%しかない

全国貨物純流動調査の結果と、個人向け宅配比率
ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便など
宅配便を取り扱う会社にとって、再配達は生産効率を下げ、利益を圧迫する重大な課題
再配達は宅配便だけで発生するものではないが、個人宅向けの宅配に比べれば、その頻度は圧倒的に少ない
再配達で苦しんでいるトラックドライバーや運送会社というのは、運送業界全体のごく一部です
再配達問題は重要な課題ではあるが、運送業界全体の課題とは言い難い

運送会社を苦しめる「配達日時指定」
再配達削減の対策の1つとして、受取側が配達時間を指定する事です
個人宅向け宅配便にかぎらず、トラック運送ビジネス全体を鑑みると悩ましいのが、この配達日時指定だ。
全貨物のうち30.5%が日付指定、28.2%が時間指定貨物
約6割の貨物が配達日時を指定されていることになる
配達日時の指定は、運送の生産効率を下げる要因
運送ビジネスは、たくさんの荷物を、遠くに運んだほうがもうかるビジネスモデルです
配達日時の指定があると、たとえば午前中は1件しか配達できなかったけれども、午後は7件配達しなけれならない
日時指定がなければ、午前午後合わせて10件配達できていたかもしれない
日時指定は運送ビジネスの生産効率の阻害要因の一つです

1989年には60%近くあった積載効率は、
(輸送トンキロを能力トンキロで割ったもの)
2018年には40%以下まで低下
積載効率の低下には、コンプライアンスの厳格化や積載方法の変化などの他要因もある
配達日時指定をはじめとする複数の要因によって、たくさんの荷物を遠くに運んだほうがもうかるはずの運送ビジネスは、生産効率を下げている
再配達は困るが、かといって配達する日付・時間を指定されすぎるのも困る
再配達のリスクが取り沙汰されるあまり日時指定が増えると困るというのも、運送会社の本音です

運送業界は中小零細企業の巨大な集合体
メディアで取り上げられることも多くなりトラックドライバー不足、
ひいては荷物が運べないという危機感は社会全体で共有され始めている
メディアが取り上げるのは、ヤマト運輸、佐川急便、日通といった大企業の動向が多く、運送大手だけを見ていると、運送業界の本質を見誤る可能性がある
国内の運送会社、約62,000社のうち、
従業員1,000名を超える大企業は82社
割合にするとたった0.1%
従業員が100名以下の運送会社は、全体の96.8%
従業員が10名以下の会社は49%もある
運送業界は、巨大な中小零細企業の集合体です

トラック運送事業の規模別事業者数
運送業界が抱える課題の多くは、お金で解決
トラックドライバー不足の原因のひとつは、トラックドライバーの給与が他産業に比べて安いからです
2017年における年間所得額
全産業平均は491万円
大型トラックドライバーの平均は454万円
中小型トラックの平均は415万円

運送業界全体の課題を0.1%しかない物流大手だけで解決できないが、
99.9パーセントを占める中小零細企業もまた、資金力のなさから課題解決が難しく、運送業界の構造的な問題である