日本の生産性は雇用規制暖和で本当に上がるの!

物価が低いから最低賃金が安いのか、最低賃金が安いから物価が低いのかという問題
最低賃金が安いから物価が低くなる
供給は増えているのに、需要は一定の場合
企業は生き残りをかけて過当競争となり、価格を下げる
全社が最後まで生き残りたいので、どこかが価格を下げたら、皆が下げる
需要は一定で増えないので、各社が、生き残るために職人を非正規雇用にしたり、全体の給料を下げ、結果品質も犠牲になります。
価格をどこまで、下げることができるかは労働市場の規制で、働く人の賃金を最低賃金にする水準までしか下げられません
(実は、顧客は値下げを求めていない、顧客がまったく喜ばない、職人の給料を犠牲にする企業生き残り戦略)
これと同じことが、日本全国で起きています

ビジネスに悪影響を及ぼしている要因として
日本人経営者は、雇用規制を第一に挙げている
日本は終身雇用だから、生産性が低い、雇用規制を緩和しないと生産性は上がらない、従業員のクビが切れないからと日本の雇用規制に問題があると考える理由は
次の3つ
1:生産性を上げるには労働市場の流動性を高めなくてはいけない
2:生産性向上についてこられない人材の入れ替えを進めなくてはいけない
3:生産性は経営の問題ではなく、労働者の問題だから、規制緩和や働き方改革を進めるべき

本当に雇用規制を緩和すれば、日本の経済や企業の経営者にとって、本当にバラ色の将来が開けるかは、慎重な検証が必要!
冷静かつ客観的な検証を行う必要がある
日本ではキチンとした検証をしないで、物事を感覚的に捉え、決めつけてしまう傾向が強い
日本は正規雇用ばかりだからダメだと言われ、非正規を増やし、終身雇用もなくし、そうすればアメリカのように生産性が上がると言われたが、、、、
過去十数年、たしかに非正規雇用は非常に大きく増加
非正規がこんなにも増えたにもかかわらず、生産性は一向に向上していません
(非正規雇用者の増加が、生産性向上の妨げになるという悪影響を及ぼしているのが実態)
感覚的な判断に頼ると、判断を間違えるので、丁寧な検証が絶対に必要

日本の雇用規制は、本当に厳しいのか?(WEFの評価)
労働市場の効率性と生産性との間に、かなり強い(相関係数)0.73
日本人経営者の雇用規制がビジネスに大きな影響を及ぼしているというのは、理屈上は正しく、労働市場の効率性が非常に大切なことがわかります
日本の雇用規制が生産性に対して悪影響を及ぼしているのなら、日本の雇用規制が諸外国に比べて厳しいことが証明されないと、理屈が通らない

日本の労働市場の効率性は世界第22位(決して低くない評価)
実は、日本の生産性向上を阻害しているどころか貢献している
日本の雇用規制は厳しいというのが常識のように捉えられていますが、事実とは異なり、日本の労働市場の効率性を構成するいくつかの項目では、高く評価がされています
労使間協力が強いは第7位
解雇手当が少ないは第9位
給与設定の柔軟性が高いは第15位

何故、高評価にもかかわらず、日本の労働市場の雇用規制が厳しいと感じる経営者が多いのか?
理由はアメリカとの比較にある
アメリカの労働市場の効率性は世界第3位、(極めて高い評価)
日本の経営者や学者は、日本の生産性がアメリカより低い理由は
日本の雇用規制がアメリカより厳しいことに原因があるという単純な比較をしている?

ものづくり大国、日本の輸出が少なすぎる、日本では現状、GDPに占める輸出比率が低い分、伸びしろが大きいので輸出を増やすべき
(経済大国は輸出比率が低いものと、証拠とするデータは、アメリカのデータだけ)
アメリカの輸出比率が低いのは事実ですが、アメリカとの比較だけを根拠に物事を決めると、判断を誤りかねない
アメリカは世界百何十カ国の1つに過ぎないのに、日本では世界の状況を語る際に、アメリカのことだけを念頭におくエコノミストが非常に多い傾向がある

雇用規制と生産性との間の相関は強いですが、雇用規制が厳しくなければ、その国の生産性は必ず高いのか?
イギリスは雇用規制の評価は世界第6位ですが、生産性は第26位
カナダは雇用規制が第7位ですが、生産性は第22位
フランスは労働市場の効率性は第56位ですが、生産性は(イギリス第26位に対して)第27位と、大差ありません
この事実からは、2つのことがわかります
1、労働市場の効率性と生産性との間に相関関係はありますが、決定的ではない
2、日本はそもそも労働市場の効率性に関しての評価は低くないので、仮に規制緩和をしても、それほど生産性の向上は期待できない

日本の労働市場の効率性が厳しく評価されている項目
解雇規制で、第113位
日本人の経営者が緩和を希望している雇用規制とは、この解雇規制のこと?
従業員のクビを切りやすくしてほしいのが本音?
解雇規制を緩和すると、本当に生産性が向上するのかどうかは、別途検証する必要有り

解雇規制の強さと生産性の相関係数は0.32
解雇規制を緩和すれば、多少プラスになるかも、しかし経営者の多くが期待するほど劇的な生産性の向上にはつながらない
実際、解雇規制が緩和されても、クビを切られる人は社員のごく一部でしょう
ごく一部の従業員のクビを切っても、生産性がいきなり向上したりしません
たしかに、コストの削減にはなりますし、その分利益は増えます
(切られる人が付加価値の創出の邪魔をしていないのであれば、その人をクビにするだけでは、その企業が作り出している付加価値総額は増えず、付加価値の項目の入れ替えになるだけで、生産性の向上にはならない)
増加した利益を再投資して付加価値を向上できて初めて生産性がプラスになります
しかし、人手不足でどこまでできるかは疑問だと、日本ではキチンと理解されていない

日本企業は社会貢献の一環として、必要以上の余剰人員を雇用している(窓際族)
生産性が低い理由の1つ(窓際族)という認識は正しくない
国の生産性は付加価値総額を人口で割ったも
余分とされている人が付加価値の創出に貢献していないのならば
会社で働いていようが、失業者になろうが、国全体の生産性は変わらない
国にとっては、その余分な従業員が無駄に使われている場合にのみ問題
(その人の潜在能力が発揮されていない分、国全体にとってのマイナス)
解雇され、別の生産性のある仕事に就くことができて初めてプラス、それまで無駄にされていた資源が活用されるからです

今の日本は深刻な人手不足、企業の経営陣が解雇規制の緩和を求める事より、なぜ実力を発揮できていない従業員の潜在能力を引き出せないのか、自分の経営手腕に問題があるのではと、経営陣は考えるべきです
今いる会社では実力を発揮できないが、人手不足の企業に移動し、自分の実力を発揮できるのなら、多少、生産性があがることが期待できますが、解雇規制と生産性との相関係数はたったの0.32
生産性ランキング世界第28位の日本の生産性の低さを考えると
解雇規制が緩和されても、解雇の対象となる従業員が相当の規模にならないかぎり、効果は少ない
日本の生産性が潜在能力に対して異様に低い最大の原因が解雇規制だとは考えづらく、解雇規制を緩和するだけで生産性が劇的に改善しない

日本の生産性が低い原因
①従業員20人未満の小規模企業で働く労働人口の割合が高い
②女性活用ができていない
③最低賃金が低い
④最先端技術の普及率が低い
⑤輸出ができていない
⑥ルーチンワークが多い

経営者は生産性が低いのは自分たちのせいではなく、労働者が悪いと考えている
生産性向上に徹底的にコミットし、グランドデザインを描くのであれば、その一部として、解雇規制の緩和も考える価値はあるが、企業規模の拡大、輸出戦略の推進、最低賃金の継続的な引き上げなどの政策もないまま、解雇規制を緩和すれば、経営者の立場がさらに強くなり、生産性をさらに引き下げる結果を引き起こすことも十分に考えられる